あなたにとって魔法とは


第二章 第二部  頼事





女の子の後をついて歩いていると窓から月明かりがさしていることに気づいた。その窓から外を見ると、ちょうど月が正面に見えた。

どうやら今日は満月のようだ。帆叢はその丸い月に目を奪われた。それはあまりにも幻想的な光景だった。

「月が、青い」

その月はとても深みのある青い色をしていた。時々、青みがかった月が見れることはあるがこれほど見事な色は普通ではありえない。

でも、ありえないなんてことはないか。魔法の世界だしきっと何でもありなのだろう。というかまずこの世界自体が普通ではない。

しかし、見れば見るほどきれいな月だ。どこまでも深く、そしてどこまでも澄んだ青だった。これと同じようなのを最近見たことがある。

そう、それは…。

帆叢は女の子が歩いて行った方に振り向く。

「なにしてんのよ!」

「おわっ!」

帆叢は驚いて声を上げる。いつの間にか女の子が目の前に立ってこちらを睨んでいた。

「いつまで待っても全然来ないから引き返してみたらなにアホ面下げてボーっとしてんのよ。何か面白いものでもあるの?」

女の子は帆叢を押しのけて窓から外を眺める。しばらくキョロキョロと辺りを見回していたが面白そうなものはなにも見当たらない。

「ちょっと、何もないじゃない。あんた、何見てたのよ」

「…月だけど」

そう帆叢がいうと女の子は怒った顔をして帆叢の方を向いた。

「はぁ?なんでこんな時に月なんか見てるのよ!早く帰りたいならちゃんと私のあとを着いてきなさいよ」

帆叢は女の子をじっと見つめる。やっぱり、よく、似ている。

「な、なによ。人の顔をじっと見て。なにか私の顔についてる?」

女の子は頬のあたりを手で何度か払う。

「いや、似てると思ってな」

女の子は手を止めて帆叢を見る。

「ん?似てるって?何に?」

しばらく黙っていた帆叢だったが急に歩き出した。返事を待っていた女の子はその行動に驚く。

「ほら、いくぞ、俺はこんなところからさっさと帰りたいんだ」

「ちょっと、私が何に似てるってのよ。…って待ちなさい!あんたどこに行くかわからないでしょ」

そうして二人は再び廊下を歩きだした。

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