夢見た場所でのお手伝い
プロローグ
ぬけるような青空の下
カーテンを閉め切ってる暗い部屋でテレビに向かっている1人の青年がいた。彼はテレビゲームをしているらしく、エンディングを迎えていた。
曲が終わり「the end」の文字が浮かび上がった。彼はそれ以上変わることのない画面をじっと見続けている。
その時、外から彼を呼ぶ声がした。
「お〜い!戒!バイト行くぞ!」
戒と呼ばれた青年は窓を開け、返事をした。
「悪い!今から支度するから1分だけ待ってくれ!」
彼の名前は神藤戒。ごくごく普通の高校二年生。
性格はマイペースでこのように時間に遅れることが時々ある。一人暮らしをしていてバイトで生活費を稼ぎ、なんとかやりくりしている苦学生である。
ダダダダダ・・・バン!
部屋の中から戒が勢いよく出てきた。
「よし!ジャスト1分!」
「バーカ。10分は経ってるよ。馬鹿なこと言ってないでさっさと行くぞ。」
バイトに誘いに来た男は戒の親友の相田直哉。彼の性格は真面目で几帳面。時間などは必ず守る。
戒と直哉は幼馴染で小学校のころからずっと同じ学校に通っている。いわゆる腐れ縁という奴である。
「10分か。それは悪かったな」
戒は少しも悪びれた様子もなく笑いながら言った。直哉はあきれながら、
「少しは反省しろよ」
と言うが戒は全く気にしない。
「じゃあ行くか」
「俺の言葉はスルーか?スルーなのか?」
「途中でなんか食ってくか?」
「完全無視か。遅れたからお前のおごりな」
「やだ」
「こういうのは聞こえるんだな」
直哉はため息をつきながら言った。バイト先に向かう途中でファミレスに入る。席に着き注文を済ませた後に直哉が口を開いた。
「そういえば、お前今さっき何してたんだ?」
「聞かなくてもわかるだろ?」
「またゲームか。ソフトは何をしてたんだ?」
「・・・グランディー=レジェンド」
「またあれをやってるのか!」
直哉は驚いて言った。驚くのもわけはない。なぜなら、
「これでいったい何回目になるんだ?」
「え〜っと・・・軽く20回は越えてるかな?」
「そんだけやってよくあきないな・・・」
「あきるわけないだろ!あれは名作中の名作だぞ!あのストーリーは感動ものだぞ?」
戒は拳を作って熱弁している。その様子を冷めた目でみながら直哉は言った。
「名作中の名作ねぇ。その割には知名度が低いと思うんだがな。それにストーリーだって小さな町にいる青年が世界を見るために旅に出てその旅先で世界が滅ぶかもしれないってことを知って仲間といっしょに世界を救っちゃうっていうどこにでもありそうなありきたりな話なんだろ?そんなんで感動なんかすんのかよ」
直哉の的確な指摘に戒は「うっ」と言葉を詰まらせた。
「そ、それは・・・確かに知名度は低いけど。ほら!知る人ぞ知るってやつだよ!」
「知らない人がたくさんいるのに名作って言うのか?」
「言うんだよ!」
「まぁそんなどうでもいいことは置いといて」
「どうでもいいことない!しかも置いとくな!」
直哉が真面目な顔になった。
「・・・戒」
「な、なんだよ」
急に直哉が真面目になったので戒はたじろいだ。
「お前、いつまで馬鹿なことやってるつもりだ?」
「・・・・・・」
戒は答えない。
「来年受験なんだぞ?今のままだったら・・・」
「・・・このほうが楽なんだよ」
「楽ってお前本気で言ってんのか?将来のことが決まるんだぞ?」
「そんなに先のことなんて考えられねぇよ。・・・もうやめよう。飯が不味くなる」
それから店を出るまで二人は言葉を交わさなかった。