夢見た場所でのお手伝い

第一章 精霊石

「「ありがとうございました」」

戒と直哉は営業スマイル全開で店を出て行く客に言った。

「おーい。お前らもうあがっていいぞ。」

店長が言った。

「はい。ありがとうございます」

「お先に失礼します。」

戒と直哉はそう言って更衣室に入った。

更衣室で着替えている時、直哉は戒に尋ねる。

「この後どうする?」

「ちょっと寄りたい所があるんだ」

「どこに?」

「輝石。たしか昨日仕入れ先から帰ってきてるはずなんだ」

「お前もまめだねぇ」

「マスターいい人だから。帰ってきたら顔だしてくれって言われてるし」

少し笑いながら戒は言った。

「そうだ。今日はお前も来たらどうだ?」

「パス。石っころには興味ねえ」

直哉は素っ気なく答えた。

「石っころって・・・」

戒は苦笑した。

バイト先を出て戒の目的の場所まで来ると「俺は本屋で待ってるから」と言って直哉は戒と別れた。

戒の目の前には西洋風の古びた小さな家がある。ドアには小さな看板がかかっていて、そこには、

『 stone shop 輝石』

と書いていた。辺りの家より古いので少し浮いているが、よく見ないと普通の家となんらかわりらいので店と気づかない人が多い。

そんな穴場の店の雰囲気が戒は気に入っている。戒は店に入った。8畳ぐらいの部屋に机や棚があり、

そこには色とりどりに輝く石が並べられている。入り口のそばにはレジがあるがそこにいるべきはずの人がいなかった。

店の中を見回したが・・・いない。しかし、どこからか物音は聞こえてくる。

戒は「マスター」と叫んだ。奥のほうから「おお、来たか」という声が聞こえ、店の主人らしき人物が姿を現した。

年は70過ぎだが、ガタイがいいので年齢を思わせない。

「マスター、久しぶり」

戒はこの店の常連客である。初めて店に入ったとき、綺麗に輝く石を見て虜になりそれ以来よく足を運ぶようになった。店の主人、十蔵とも

気が合い親しみを込めて『マスター』と呼んでいる。

「久しぶりじゃのう。今回の旅はよかったぞ」

十蔵は嬉しそうに旅の話をし始めた。戒はあわてて十蔵を止めた。

「マスター、ごめん。今日はちょっと顔を出しに来ただけなんだ。友達を待たせてるんだ」

十蔵は酷く残念な顔をした。

「そうか・・・」

「また今度聞きに来るからさ」

戒は申し訳なさそうに言った。

「まあ、人を待たせてるんだったらしょうがないのう」

そう言った後、十蔵は少し考えてから口を開いた。

「ひとつだけ見せたいものがある。時間はかからないから待ってなさい」

そう言うと十蔵は店の奥に行き、何かを持ってすぐに戻ってきた。

「今回の旅で手に入ったものだ」と言って、戒にその『何か』を渡した。

全く加工されていない少し大ぶりの綺麗に透き通った緑色の石だった。

「普通のエメラルドじゃないの?」

と、戒は尋ねた。エメラルドは何度も見せてもらっているので別に驚くことはない。

「日の光に透かして見てみなさい」

十蔵は微笑みながら言った。戒はわけがわからなかったが言われたとおりにやってみた。すると・・・

「・・・うわっ」

戒は息をのんだ。緑色だった石が七色に輝いたのだ。その石の中に吸い込まれるそんな感じのする妖艶な輝きだった。戒はその石から目

が離せなくなっていた。

「どうだ。綺麗だろ」

十蔵はにかっと笑った。

「そいつはな、

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