あなたにとって魔法とは


第二章 第二部  頼事





「足はもう大丈夫ですか?」

「ええ、なんとか」

足の痛みが治まるまでにしばらく時間がかかった。素足なのに思いっきり踏んづけられたのだからしかたない。もちろん、女の子は謝っていない。

性格がわかってきたのでそんなことはまったく期待はしていないが。

帆叢は男の方に向き直って頭を下げた。

「先ほどは無礼な口のきき方をして申し訳ありませんでした」

帆叢の急な態度の変わりように男も女の子も驚いたような顔をしたが、すぐに男は薄く微笑んだ。

「顔を上げてください。あなたが謝る必要はありません。落ち度は完全にこちらにあります。むしろ謝るのは私のほうです」

「あなたにも謝る必要はありませんよ。原因は全部こいつのせいですから。謝るのならこいつですよ」

顔をあげた帆叢も微笑んで隣に立っている女の子を指差した。

「なんで私があんたなんかに謝らないといけないのよ」

そう言って女の子はそっぽを向く。男は苦笑いを浮かべていた。

「すいません。あとで言って聞かせますので」

「ええ、よろしくお願いします」

まるで子供のしつけの話をしている親の会話のようだ。

「先ほどの話からするとあなたは何も知らずにここに来たことになりますね?」

「ええ、こいつが全く説明してくれなかったんで」

帆叢は女の子の方を見るが彼女はそっぽを向いたまま無視を決め込んでいる。

「わかりました、説明しましょう。少し長くなりますのでお座りください」


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